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今年の五席!番外編

2008年12月31日

ここまで来たらどんどん書いちゃいましょう。

五席のなかに喬太郎師や白酒師が入っていないのは、意図的というか、彼らの高座はまだまだ現状の形でまとまってしまうとは決して思えないからです。すなわち落語としての完成型がこれからもどんどん変化していくと思うから。何時の時代のどの高座がベストだとはまだまだ言える段階ではないのだろうと思います。

権太楼師について言えば夏に「船徳」を観たとき、ちょっと衰えたなぁという感じが拭えず、それ以来高座を観る機会が少なくなりました。単に体調が悪かっただけようだと、私的には思っていますが、落語に関して言えば、師の大胆な演目に関する解釈、「佃祭」や「芝浜」(これは人づてに聞いただけですが)など、ついて行けない部分もありました。ただこれは師の高座が好きではない、ということではなくて、私自身の師の落語への理解が足りないというだけのことです。来年、というか今年はもっと師の高座を観て理解を深めたいな、と思っていますけれども。

以下は2008年で特に気になった高座。

 6月28日 柳家喬太郎「双蝶々」@BAR461(第六回柳家喬太郎独演会)

 8月9日  柳亭市馬「転宅」@池袋演芸場(8月上席昼の部)

 8月23日 古今亭志ん輔「佃祭」@三田仏教伝道センター(第二十二回ビクター落語会夜席)

 9月20日 五街道雲助「藁人形」@三田仏教伝道センター(第二十三回ビクター落語会夜席)

11月29日 桃月庵白酒「木乃伊取り」@鈴本演芸場(11月下席夜の部主任)

12月28日 古今亭菊之丞「湯屋番」@新宿末廣亭(12月下席夜の部)

以上、こんなところです。

今年の五席!その2

2008年12月31日

昨日の続きです。

◆クイツキ 柳亭左龍「初天神」10月8日 10月上席昼の部@池袋演芸場

左龍師は、私が落語初心者に是非勧める噺家の一人。もちろん家元や小三治師、喬太郎師や昇太師のような名人、人気者もいいけれど、彼らだけではなく、そんなに知られていない普通の(といったらヘンだけれど)噺家さんでも落語って十分に面白く楽しめるのだという証拠になるでしょう。特にこの「初天神」は聴くものを選びません。大人から子供まで、ディープな落語ファンから昨日落語を聴きだしたビギナーまで大いに楽しめる高座。なぜなら左龍師が演じるところの主役の金坊、これが落語界最強最悪?の子供だから。これを聴いちゃったら、他の演者の「初天神」はおそらく聴けません、金坊が大人しすぎて。しかしながら左龍師の実体は、師匠のさん喬師をして「古典は左龍にまかせた」といわしめたほどの実力者。先日も「淀五郎」という笑いの少ないガチの芝居噺もこなす。にもかかわらず、兄弟子のDNAを引き継いでいるのか、天然なのか、故三波伸介氏にも似たその風貌が客席に爆笑の渦を巻き起こす。難点は、高座によって出来不出来が結構ハッキリしているところかな。そうはいってもこれからはもっとチェックしていかなければならない噺家さんではあります。

そして、今年のベスト1は・・・・・

◆トリ 柳家さん喬「子別れ」(上・中・下) 9月14日 9月中席夜の部@池袋演芸場

もうこれしかありません、今年は。この9月中席はネタだしはしていたものの、どの日にどの演目が口演されるかわかりませんでした。ちなみに別の日に行った私の友人は「百年目」を聴くことができたそうです。とはいえ、この日にさん喬師の「子別れ」を通しで聴くことが出来たことを落語の神様に感謝。さん喬師を一年間観てきて、本当に凄いと思ったのはその高座に出来不出来の差がほとんどないこと。師匠自身はそんなことはない、と思っているにちがいないでしょう。もちろん台詞を言い澱んだり噛んだりすることはありますが、そんなものを吹き飛ばしてしまう説得力、落語という枠を超えた演技力がありました。この「子別れ」でいえば、「強飯の女郎買い」での延々と続く熊五郎の独白や「子は鎹」での亀との会話など、聴く者にとって、特に熊五郎に何かしらのシンパシーを感じてしまうところがある人間には、心を揺さぶられずにはいられない高座ではありました。また師の高座、特に人情噺において、はこの「子別れ」だけではないですが、観客の魂を激しく揺さぶっておきながらその後に何か気づかされるものが必ずある。そして彼らがそれに気がついたとき、そこには師の高座の上での笑顔があると思うのです。いわば師のファンはその笑顔を観るために、寄席や落語会に通い詰めていると言っても過言ではないでしょう。私自身はどうかといえば、これから通い詰めるというよりも節目節目で師の高座を観ることで、「落語というモノはこういうものだ」という価値の水準を保っていきたいと思っています。

・・・・と気がついてみると、すっかり新しい年になってしまいましたね。今日も仕事で、この記事を書いている最中にちょっとウトウトとしてしまったら、一気に寝込んでしまいました。年内中には書き上げようとおもったのですが。とりあえず日付は2008年12月31日のままなので、おきまりのフレーズを。

今年は色々とこの「梅薫庵日記」を読んでいただいてる皆様にはお世話になりました。どうもありがとうございました。

来年が皆様にとって良い年でありますよう、お祈りしております。

今年の五席!その1

2008年12月30日

やりますよ、今年のベスト5。

ただちょっと私の場合、違ってます。

以前にも書いたんですが、ちょっとした落語会形式でやります。

つまり、普通の落語会ってこんな感じですよね。

前座

二つ目

中トリ

~中入り~

クイツキ

トリ

で、私のベスト5は、こんな感じでやってみたいと思います。

前座→今年観た前座さんで良かった人。

二つ目→今年観た二つ目さんで良かった人。

中トリ→今年観た高座で第2位に入るもの。

クイツキ→今年観た中でちょっと気になった高座。

トリ→今年観た高座でベスト1!

そうしたら、まず前座から。

◆前座 柳家小ぞう。

小ぞうさんの高座、今年14回も聴いているのですよ。偶然なのかわからないですが、それだけ色々な師匠に落語会に呼ばれて可愛がられている証拠でしょう。噺の方も今年の前半と後半と比べても格段に巧くなっていると思うし、何しろ自分のペースで高座を行っていることが他の前座さんとの違いです。けっして客席負けしていないということです。もちろん前座としての経験もあるということもその理由でしょうが、彼自身の独特のフラが表に出始めたということもいえるでしょう。それに彼の素晴らしいところは、高座の上の仕事での立ち振る舞い。お膝送りの時の様子や高座返しをするときの所作など、観ていてとても気持ちがいいです。

◆二つ目 古今亭菊六「やかん」 10月18日 NHK新人演芸大賞・落語部門決勝@NHKふれあいホール

この決勝では某落語家御曹司二つ目に悔しい思いをさせられたと思いますが、実力は明らかに菊六さんの方が上でした。彼は二つ目の中では語り口といい所作といい、抜きんでてますね。古今亭の伝統を受け継ぐ正統派。兄弟子菊之丞師の雰囲気を漂わせつつ、男性的で図太い高座が出来るんじゃないでしょうか。そのためにはもうひと皮もふた皮もむける必要があるかもしれません。ライバルは同期の春風亭一之輔さんだろうけれど、彼のような大らかな高座をする噺家さんとはプラスとマイナス、お互いを引き合いながら刺激しあっていい競争相手になるでしょう。それにしても今年は一之輔さんをあまり観る機会がなかったなぁ。もっと観なければ。

◆中トリ 柳家喜多八「文七元結」 10月25日 第24回ビクター落語会昼席@三田仏教伝道センター

終盤でケータイが鳴るという無情なアクシデントがありましたが、そんなことがあってもこの時の喜多八師の素晴らしさが損なわれることは決してありません。大ネタの印象があるこの人情噺を40分強というコンパクトさで治めたにもかかわらず、登場人物の長兵衛、卯兵衛、佐野槌の女将の描き分けは秀逸のひと言。特に卯兵衛の大店の主人としての威厳ある態度と、佐野槌の女将の人間の善悪、酸いも甘いも全てを知り尽くしたクールな態度は、もし師の「文七元結」を観る機会があるのなら、是非観ておいて損はありません。そして権太楼師やさん喬師の感情を表に出した演出と比べてみても劣るモノではないと信じます。

それでは、この続きはまた明日、大晦日ということで。

<おなかぁ~い~りぃ~>

今年のベストってどうなの?

2008年12月18日

年も押し詰まってくると、今年のベスト何とか、

色々なジャンルでそういったものが話題になります。

落語のブログでも毎年この時期になると、私のベストテン!

またはファイブ!、またはスリー!を披露するブロガーもいらっしゃいます。

逆に中には「何それ?私はやらない。そんなの興味ありませんよ」と言い切る人もいます。

「どれくらい寄席・落語会に行って、何席観た?意味ありませんよ。第一ね、ヤ・ボ。」

まぁ人それぞれなんで、どのような考えをお持ちになろうといいんですが、

こういったものの楽しみは、一種のお祭り、互いに良かったものおしえあうことで、

それまで自分の知らなかった、あるいは興味のなかったネタや噺家さんたちを

あらためて知ることができること。

それで次の年はそういったネタを聴いてみよう、

噺家さんを観てみようという気になるかもしれない。

それが一番の目的というか楽しみという気がするんですがね。

今年3月からこの「梅薫庵日記」を書いてきて、色々な人から色々なご意見をもらいました。

「あの日のあの高座は私もそう思いました」

「いやそれはちがうだろう、俺はこう思うな」

など、私も他の落語ファンの皆さんからのコメントに

「う~ん、そうだな」

「いや、やっぱりこうじゃないか」

と思うこと、しきりでした。

こういう意味で、今年の落語を観てきた総決算として、「梅薫庵日記」でもやります。

題して(というほど大げさなものではないですが)、

「2008梅薫庵が観た落語ベスト5!」(仮称。それにしても、わぁ、クサ~)

まだ今年はあと半月あるし、まだ観る予定の高座もあるので具体的なものは何にも決めてませんが、

形式は次のように一般的な落語会形式にしたいと思っています。

普通落語会って次のようなかたちになっていますね。

前座

二つ目

中トリ

中入り

クイツキ(またヒザマエ)

トリ

それで

前座→今年観た前座さんで良かった人。

二つ目→今年観た二つ目さんで良かった人。

中トリ→今年観た高座で第2位に入るもの。

中入り→今年落語を観ていて色々思ったこと。

クイツキ→今年観た中でちょっと気になった高座。

トリ→今年観た高座でベスト1!

「またまた梅薫庵の野郎、上から目線で能書きたれやがって」

と思われそうですが(-。-;)、ま、私はこんな感じでやっていようかと考えています。

さてどうなりますことやらねぇ~。(^^ゞ