4月29日 落語協会4月下席昼の部@池袋演芸場
三遊亭歌ぶと 金明竹
柳家小権太 のめる
柳家甚語楼 弥次郎
柳亭左龍 羽織の遊び
ロケット団 漫才
林家しん平 反対車
柳亭市馬 雛鍔
~中入り~
林家正蔵 四段目
柳家さん生 親子酒
柳家小菊 俗曲
柳家小里ん 五人廻し
黄金週間といつても、暦の休み通りの出勤なのでけふのやうな一日だけの休日の過ごし方には毎度悩む。何処かに行かうかとフラフラと家を出たところ携帯から落語協会のホームページを見たところ、白酒師、三三師の代演で左龍、正蔵師が高座に上がるといふので池袋に行くことにした。
■三遊亭歌ぶと 金明竹
前座としては標準以上、二つ目になるのも時間の問題ではないか。といふか、並の二つ目よりも実力はあると思ふ。容姿、落語の形は三三師に似てゐるやうな感じがしないでもないが、師よりは素直さう。それにしても歌武蔵師匠はいひお弟子さんを持つたものだ。もちろん師匠の指導の賜物だが、歌ぶとくんは将来が楽しみ。早速私の贔屓リストに入れておくことにしよう。
■柳家小権太 のめる
小権太さんは、運の悪い噺家さんだと思ふ。二つ目だと寄席に上がるのも限られるし、上がつたときもその実力が発揮出来るとは限らない。少なくとも私が観た高座はセコ金(質の低い客)の為にかはいさうなほどだつた。けれどもけふはその実力が発揮出来たのではないかな。池袋の下席といふこともあつて与へられた時間が十分にあつて、自らを汗つかきだと以前の高座のマクラで話してゐたが、大汗をかきかきの大熱演だつた。
■柳家甚語楼 弥次郎
逆にけふそんな役割を演じたのが甚語楼師。小権太さん、甚語楼師、左龍師と体型も似てゐれば、けふ口演した噺もジャンルは違ふが同じ滑稽噺といふことでちよつと損をした形。でもだからといつて、噺の質が悪かつたといふのではなくて、ただ目立たなかつただけだ。
■柳亭左龍 羽織の遊び
落語の噺には同じやうな入り方といふか導入部が結構あつて、ちよつと聞いただけでは何の噺かわからないことが多々ある。けふも「突き落とし」かな?と思つたら、「羽織の遊び」だつた。オカマチックな若旦那とのやり取りが秀逸。
■林家しん平 反対俥
恥づかしながら初見。これが映画「セーラー服と機関銃」で薬師丸ひろ子をバイクに乗つけて新宿を疾走した男?年取りましたねぇ。マクラを聴いたときはこりや漫談かなと思つたけれども、しつかりマクラを生かして噺の本題へ。ヘンに媚びたクスグリがあつたりオーバーアクションをするわけでもなく、しつかりとした古典落語でした。
■柳亭市馬 雛鍔
けふの高座返し、柳家緑君のことを肴に(ある師匠の時メクリを間違へさうになつた)自分の前座時代のことをマクラに。八代目の正蔵師匠との思ひ出が師の物まねを含めて笑ひを誘ふ。けふはちよつと風邪気味なのか咳をしたり手拭を鼻にやつたりと体調はイマイチの様子だつた。しかし噺のはうはさういふ体調の悪さとは関係なくいつものやうに水準以上。ちなみにこれも噺の導入部で「佐々木政談」と思つてしまつた。
■林家正蔵 四段目
やつぱり正蔵師は巧いと思ふ。芝居を題材にした演目を口演されたときに、その芝居について予備知識がなければ噺を聞いても何がなんだかチンプンカンプンで面白くないものである。そして普通の噺家さんは、さういふことを防ぐために芝居のことを知らないファンに向けて、興味を繋ぐやうなマクラをきちんとするだらうか。思ふにこの辺はテレビの司会の経験がある正蔵師の有利な点でぢやないかな。芝居についてクドクド説明するわけでもなく、それでゐて本題の噺へ興味を引くやうな話芸をこの人は持つてゐる。こんなこと当たり前かもしれないが、最近は教科書通りの噺しか出来ない噺家さん(真打、二つ目、前座問はず)が多い中で、これはもつと評価されてもいい。
■柳家さん生 親子酒
持ち時間のうち、マクラ半分、噺半分、といつたところか。マクラの居酒屋のオヤヂや小料理屋の女将の噺が面白かつた。むろんこれは噺自体が面白くなかつたといふことではなく、膝替はりとしては十分な内容。
■柳家小里ん 五人廻し
江戸弁が渋すぎ!と思つたところマクラもほとんど無しで噺へ。廓噺だが牛太郎(店の若い衆)と客とのやり取りが笑はせる滑稽噺でもあるので、演者によつて大爆笑させることだつて出来るのに、あまりの渋さに客席も静まり返つてゐた。口調が先代の小さん師に似てゐるといふ人もいるぐらゐだがら、もともとがそんなに大爆笑させる噺家ではないのだらう。ちよつと物足りないと思つた人もゐるかもしれないが、たまにはかういふ味はひある噺家さんの口演を聴くのもいい。
けふのやうに、たまたま入つた時にいい高座が聴けるのが寄席の魅力。だから寄席通ひはやめられない。