3月30日 池袋演芸場 11:00~
柳家ごん坊、改め柳家ほたる二つ目昇進おさらい会卒業式?
お菊の皿 ほたる
真田小僧 右太楼
百年目 権太楼
開場前、演芸場前で並んでいると通りがかった兄ちゃん二人組が言ってました。
「なにこの列?」「パチンコだろ」
確かに場所的にはねぇ。でも権太楼師匠の噺を聞きに来たんだよぉ。
開場前に長蛇の列が出来て定時を過ぎても寄席の中に人が入りきれず、立ち見も出るほどの盛況。そもそもこの「おさらい会」、権太楼師匠の高座を公開リハーサルで聞くという感が強いのですが、今日事前に配られたチラシによると「百年目」を今日演るとのこと。これって、鈴本5月上席夜の部「権太楼噺たっぷり十夜」の演目の一つですね。まさに公開リハーサル。でも、内容は素晴らしかった。
まずこの3月に二つ目に昇進したほたると、現在二つ目の右太楼、と権太楼師が並んで登場。ほたるくんの昇進口上をするのかなと思ったら、そこまで堅苦しいことではなくて、「前座」としてこのおさらい会に出るのが今日が最後ということで、その卒業式とのこと。っていうか、右太楼といっしょに師匠がちょっとお小言を言ったということなんですね。
いいかえれば、この二人に対する師匠の期待を今日きたお客さんの前で熱く語ったというところでしょうか。(このことについては、後日書いてみたいと思います。)
そして、その小言=期待が、今日の「百年目」の前説になったようです。
まずはそのほたるくんの「お菊の皿」。師匠の小言に緊張したのか、マクラからかなり緊張ぎみ。噺の入り方もトチるなど舞い上がっているのが客席からもわかりました。出来自体は先日観た独演会のほうが、数段良かった気がします。やはり師匠の前にネタをおろしたばっかりの噺をやるのはやりにくいですよね。
つぎは右太楼さんの「真田小僧」。今回は講談の部分はカットしていました。ほたるくんとくらべては申し訳ないけれど、やっぱり兄弟子。実力は数段上。話の運び方やキャラの描き分けなどは、師匠から「今年は何かしらの賞をとるだろう」と言わしめたほど。もっとじっくり聴いてみたい噺家さんですね。
ところで右太楼さんって、権太楼一門のなかでも異色。何でって彼だけ痩せてるよね。(笑)
最後に権太楼師の「百年目」。今の時期、大抵の噺家さんは「長屋の花見」か「花見の仇討」を口演するなか、師は、今日のおさらい会に「百年目」を選んだのでした。
師としては、上に書いたようにこの会は「公開リハーサル」ですから、肩の力を抜いて、いわば流すという感じで口演されたのかもしれません。
しかし、そのリラックスした雰囲気の中で口演された「百年目」は、最後のところ、まさに旦那が番頭に諭すところで、まさに師自身が愛弟子両人に諭しているように私には思えて、今日のこの会自体の雰囲気が何か暖かいものに包まれているように感じたのです。
もしかしたら、師は今日この噺を右太楼、ほたるのために口演したのかもしれません。
もちろん噺そのものもすばらしかった。なぜ他の噺家さんが「百年目」を口演しないのか不思議なぐらいでした。確かに50分ちかくある大ネタとはいえ、人情噺として他の「花見もの」にはないものがあるのに、です。
東京はもしかすると、この週末が桜のピークになるかもということですが、その日に師の「百年目」を聴けたことは本当に幸せでした。